捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで

『あの……主人はあなたのおうちで御厄介になっているんでしょうか』
『厄介じゃありませんよ。奥様がいらっしゃる前からずっとのことですし』

私は言葉を失った。
ずっと？　結婚前から京太の面倒を見ている？　家に着替えがある？
さすがにここまで言われればわかる。この人は京太の愛人なのだ。愛人と関係を続けたまま、私と結婚したことになる。

『私以外にも、京太さんのお世話をさせてもらっている女性は社内にも社外にもいますわよ。お気に入りは変わるので、全員特定は私もできていませんけど』

知らないのはおまえばかり。そう言う口調だったのは、私の被害妄想ではないと思う。

『奥様はなんの心配も要りませんわ』

そう笑顔で言われ、私はよろよろと帰路についた。私は夫に浮気をされているらしい。相手は複数。夫が私を抱かないのは、他に興味のある女性がたくさんいるから……。
頭を殴られたようなショックとはこういったことを言うのだ。足元がおぼつかないし、指先まで冷たい。
ともかく京太と話さなければならない。
先ほどの女性が嘘を言っている可能性だってまだあるのだ。
そうだ、夫婦なのだから対等に話そう。その上で、関係を構築し直さなければ。