両親に挨拶をし、実家を出たのは翌日。九月のよく晴れた日曜のことだった。今日から奏士さんとふたり暮らし。二ヶ月後には夫婦になる。
嬉しいような気恥ずかしいような。
だけど、今度こそ幸せになる。奏士さんとならそれが果たせる。

奏士さんが仕事で家にいないことは知っていた。引越し業者に荷物を運び込んでもらい、ひとり荷解きを開始する。今日中に終わらせるぞ、と夕方まで延々作業をしていたら、さすがに疲れてしまった。

「そういえば、お腹が空いた」

気分転換を兼ねて外へ出ることにした。
ここからならアーバンコンチネンタルホテルが近い。ラウンジで夕食代わりにサンドイッチでも食べよう。奏士さんからは遅くなるかもしれないと言われているし。

散歩がてら、まだ薄青の残る夜空の下歩く。夏の熱気が心地いい。
去年の夏は離婚したばかりで、いろんなことに必死だった気がする。奏士さんもアメリカだった。夏も秋もあっという間に通り過ぎて行った。今年からは、夏も秋も冬も、ずっと奏士さんと一緒なのだと思うと嬉しい。

ホテルのエントランスは冷房で寒いくらい冷えていたけれど、外を歩いてきた私にはちょうどいい気温だ。
温かな紅茶とサンドイッチをいただくにもちょうどいい。ラウンジに向かうため、エントランスを横切ろうとして、ぎくりと凍りついた。