捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで

「いえ、沙織のためでもありますから。双子って妙なもので、沙織が悲しいと俺も悲しいんです。大人になってもそうなのが不思議です。今は沙織が幸せになれるよう協力したいんです」

きっと、功輔さんは沙織さんと由朗の仲を複雑に想う部分もあるのだろうな。言葉尻からそんな印象を受けた。
年下の身体があまり強くない男、家柄から姉を幸せにできないかもしれない男。だけど、沙織さんを想っているから、彼女の気持ちを尊重して反対しない。
功輔さんは寡黙でクールな印象の人だけど、実は愛情深いのだろう。信頼のおける人だから、奏士さんだって頼りにしているわけだし。

「ところで、里花さん、あまり寝ていないのでは?」

突然言われ、私はぎょっとした。

「メイクで隠しているようですが、隈がくっきりと」
「え? 本当ですか?」
「無理をしていると知れば奏士社長が心配します。俺たちも叱られてしまいます」
「なんで功輔さんが叱られるの?」
「里花さんに対しては、奏士社長おかしいですからね。『俺がいない間、里花の様子をみていてくれ』って母親みたいな過保護っぷりですよ」

その言葉に思わず笑ってしまった。奏士さんの愛情深さもだけど、真顔でそんな説明をする功輔さんもおかしい。