彼の親指が私の下唇をふにふにと弄る。奏士さんの黒曜石のような瞳に囚われ、逃げるどころか私は薄く唇を開け、キスをねだるような顔をしてしまう。

「里花、返事してくれ」
「奏士さんの……ものになります。……抱いてください」

奏士さんの顔が近づき、唇が重なる。さっきよりもっと熱のこもったキスだ。私は腕を伸ばし、奏士さんの首に巻き付けた。
背をしなるほど抱かれ、その力に彼の深い愛情を感じる。

「好き、大好きです」
「俺もだ」

奏士さんが私の身体を抱き上げた。




意識が浮上していく。目覚めた時、私は一瞬自分の状況がわからなかった。身体を起こし、身体中が強張って痛いと気づく。裸の胸を見下ろし、その視線の向こうに眠る奏士さんの姿を見つけ、どきりとした。ようやく記憶がはっきりしてきた。
私は奏士さんに抱かれたのだ。途端に身体中が熱くなり、動悸が激しくなる。
疲れているのか深い寝息をたてている奏士さん。何度も何度も情熱的に交わした愛を思いだし、恥ずかしさでいっぱいになった。そうだ。奏士さんの恋人になったのだ。
なんて情熱的な時間だったのか。奏士さんは全然離してくれなくて……私も初めてなのに……。思いだして居ても立ってもいられなくなる。

起こさないようにベッドから降り、立ち上がると身体の奥がずくんと痛む。愛された痛みなのだと思うと、恥ずかしさと確かな喜びを感じた。