捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで

宮成商事は有休をとった。奏士さんに会うために私は渡米する。昨晩、そう決めすぐに奏士さんへメッセージを送った。

【お話があるので、そちらへ向かいます】

既読はつかないし、返事はない。
一晩経った今もだ。十三時間の時差を考えても、彼が一度もスマホを見られないという時間帯ではないと思う。敢えて見ていないのかもしれない。
奏士さんは、私と話したくないのかもしれない。

「返事がなくても押しかけるわ」

私は宣言する。

「奏士さんはわからないけど、私には話したいことがあるもの」
「姉さん、結構強いな……」

由朗が呆れているのか、感心しているのかわからない口調で言った。

成田空港のロータリーで下ろしてもらった。見送りまでついていくという由朗の申し出を断り、ひとり国際線の第二ターミナルを目指す。急遽取ったニューヨーク行きの便は早朝で、始発がないため由朗が送ってくれたのだけど、ここからはひとりで行動するつもりだ。
単独で海外に行くのは初めて。でも、不安に感じている暇なんかない。
奏士さんと話せないまま、彼の心が離れていくことを考える方が不安だもの。

チェックインカウンターで搭乗手続きを済ませる。荷物はボストンバッグひとつなので預けなかった。
搭乗ゲートに移動するにはまだ早い。空港内のカフェで何かお腹に入れておくことにした。