捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで

その時、スマホが振動した。由朗からだ。

【姉さん、このニュース見て】

貼りつけてあるネットニュースの見出しは『アナ・ミラーの娘、婚約』。
急くような気持ちでニュースをタップすると、記事本文が読めた。

『アナ・ミラーの娘でモデルのマノン・ルーセルが婚約。お相手は日本企業の社長とのこと。ふたりは昨年知り合い、すぐに意気投合。順調に愛を育んできた』

おそらくパパラッチが撮ったであろう写真が掲載されている。劇場に入っていくマノン・ルーセルの横にいるのは間違いなく奏士さんだ。いつの写真だろう。コートを着ているから最近のものだろうか。

アメリカに戻っても、奏士さんはマノンと会っている? 
それは仕事の付き合い? 
そんなに何度もエスコートをする必要があるの?

……マノンとお似合いだと言ったのは私だ。

心の中に絶望が暗い波になって押し寄せてくるのを感じる。私があんな態度を取ったから、奏士さんの心はマノンの方へ行ってしまったのだろうか。

「違う」

私は呟き、立ち上がった。