捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで

全部読み終わって、私はもう一度最初から京太の字を追った。それから、写真を手に取り、改めて見つめた。
京太が見たこともないような笑顔で笑っていた。これがこの人の素の笑顔なのだろう。
摩耶さんはあのきつい表情はどこへやら、母親の顔で微笑んでいる。腕の中の赤ん坊はきょとんとした顔をしている。

胸が温かくなる心地がした。
あんな風に別れた人なのに、こうして時間と距離ができれば、互いの幸せを祈れる。私は、京太の謝罪の言葉を素直に受け取れる。
私と彼はうまくはいかなかった。だけど、彼は別な場所で大事な人と新しい生活をしていくだろう。

そのとき、私はどうするのか。
私はこのままでいいのだろうか。
離婚したことや、自分のスキルのなさを言い訳に、奏士さんと向き合っていないのではないだろうか。彼の隣に並び立つのは私だと胸を張って言えないのは、私の弱さではないだろうか。

「私、馬鹿だった……」

自分自身の弱さを奏士さんに押し付けた。マノン・ルーセルの方がいいだなんて、私は本当にひどいことを言ったのだ。
今更ながら、あの晩が悔やまれる。醜い嫉妬で、心をコントロールできず、奏士さんを傷つけた。
彼女が奏士さんを好きであっても関係ない。私の方が彼を好きなのだから。私以上に、奏士さんのことを好きな女はいない。
それを伝えなければいけない。