紅茶を淹れ、奏士さんの前に置き、向かいに腰かけた。

「疲れているでしょう。無理して会いに来なくていいんです」
「一昨日のパーティーはすまなかった。里花が来ていると知らなかった」
「由朗の代わりに急遽行くことになって。でも、気になさらないでください」
「マノンのことは気にしないでほしい。誰にでも距離が近いんだ」

奏士さんは自嘲的な表情で言う。

「まあ、正直に言えば見せたくなかったよ。好きな人に、他の女性といるところは。それが仕事上でも」
「お仕事だって理解してます」

答えながら胸の奥がちくちくしてしまう。本音を言えば、自信喪失してしまった。奏士さんの隣にいていいのかわからない。頭では自信を持たなければと思っている。こうして会いにきてくれるくらい奏士さんは私を大事にしてくれているのだから。それなのに、心が言うことをきかない。

「でも、奏士さんとマノンさん、お似合いでした」

思わず口から零れてしまった。それが嫉妬の念から出た醜い言葉だと気づき、羞恥で自分が嫌になる。それなのに、止まらない。

「美男美女で並んでいて絵になるというか」
「俺には関係ないよ」
「あの場にいた出席者も、三栖グループの関係者も、奏士さんとマノンさんを恋人同士みたいに見ていたんじゃないかしら。奏士さんもマノンさんを気遣っているし、マノンさんは誰が見ても奏士さんが好きで。綺麗で初婚で……彼女は、私よりずっと奏士さんの婚約者らしい」
「そんなふうに思ったのか」

奏士さんの言葉に私はぎゅっと下唇を噛みしめた。
ええ、そう思ってしまいました。私は相応しくないって。
だけど、それを奏士さんに言うのは、彼を傷つけることになるのに。