奏士さんが忙しい間、私もできることをしよう。
浮ついた気持ちを引き締めるのは、彼の気持ちに応えたいと感じているから。離婚から半年、対外的な目はまだ厳しいかもしれないし、私は自分で歩き出したばかり。でも、奏士さんが周囲にも婚約者だと言ってくれるのなら、もう待たせたくない。彼の隣に立つ自信よりも、覚悟を持つべきではないだろうか。誰に何を言われても負けない勇気と覚悟が必要だ。

そして、私から彼に告白する。恋人にしてほしいと伝えるのだ。
密かに芽生えた夢を胸に、毎日の仕事に精を出そう。奏士さんに胸を張って会うのだ。

翌週、私は父の出席するパーティーに同行することになった。本当は由朗が行く予定だったのだけど、風邪を引いたのか熱を出してしまったのだ。
謝る由朗をベッドに押し込め、普段由朗の務めている父の秘書役を私が担うことになった。

「今日は三栖本社のレセプションパーティーよね。海外ブランドとのタイアップがあるんでしょう」

会場へ向かいながら尋ねると父が頷いた。

「ああ、そうだよ。今日は里花もビジネスパーソンとして付いてきているのだから、見識を広げなさい」

以前の父なら、私がこういった場で社会人として顔を広げる必要はないと考えただろう。今は、私を部下のひとりとして見てくれているのだ。