「……メル、それ作りすぎでは?」

「へっ?」


 目の前には、パン生地。しかも、大量に成形されているパンたちがズラリ……。


「ごめんなさい、頭冷やしてくるから焼いててくれる?」

「あぁ、全然いいけど……大丈夫か?」

「うん……だ、大丈夫」


 私は裏口から外に出ると石段に座り、顔を伏せて俯く。
 あの日、私はギルバート様に『お気に入りの子がいる』って聞いて少しショックを受けたらしい。