「メルちゃんいるかしら」


 私がお茶を飲みながら部屋で本を読んでいると、入って来たのはエミリーさんだ。


「どうかされましたか?」

「読者中だったかしら……ごめんなさいね」 


 私は本に栞を挟み閉じる。


「いえ、大丈夫です」


 エミリーさんは人払いをすると真剣な顔で言った。


「実は明日ね、国王陛下がお忍びで公爵邸(うち)に来るのよ」

「え……」

「まあ、兄弟の食事会ということかしらね」


 きょ、兄弟……? 


「国王陛下と誰が兄弟なんですか」

「あれ言ってなかったかしら……オスマン様よ。国王の二番目の弟ね」


 ええ……知らないです。全く聞いてないよ。