五島さんの勢いについつい乗せられて、軽々と了解の返事をしてしまったが、時間が経つにつれて段々と胸中に不安が募っていた。
ショーへの参加をお断りし続けているなずなを、俺が説得?
いや…いやいや。
彼氏だからって、あのなずなが俺のお願いを特別に聞くなんてあり得るのだろうか。
俺相手なら尚更、『は?伶士のくせに生意気なんだよ!』だなんて言われそう(…)。
ついつい気が大きくなっちゃってたよ。とほほ。
しかし、何故。
ヤツはお断りしたのだろう。女子にとっては名誉あることなのに…。
それに。
俺があのウェディングドレス姿を見てみたい。なんて。
……やはり、説得を試みて、何とかしなくてはならないのだ。
「……伶士、伶士!」
「はっ!……は、はい」
「何ボーッとしてんだよ。着いたぞ」
「あ、うん…」
ふと我に返ると、俺の隣には噂のなずながいた。
不満げに、俺をじっと睨みつけているようだ。
……いかんいかん。ただいま、待望の放課後デート中だった。デート中、並んで一緒に歩いているにも関わらず、ボーッとするなんて罪。罪だ。



