その時、ガタッと椅子の動く音がした。
ふと目をやると、玲於奈が立っていて、カウンター席からこっちの方にツカツカと歩いてくる。
「違いマスよ、たくろークン。ボスは冷静に決断したようで冷静になれてマセン。当たり前デショウ。ボスにとって優サンは家族以上の存在なのですカラ」
「玲於奈…」
「それに、我を失った決断だろうがそうでなかろうが、『殺し』を考えている以上、オトナが止めなければなりまセン。わかるけど…と、肯定なのか否定なのか曖昧に誤魔化すのはやはり不正解デスヨ」
「わ、わかったわかった。なんでそこ思い余って立ち上がっちゃうぐらいムキになんの」
「ボクは、ボスが自らその手を汚そうとしているのをなんとしても阻止したいんデスヨ。……伶士クン。なずなサンは何か言っておりませんデシタか?リグ・ヴェーダに対して復讐を考えているとか、その詳細とかボスのことトカ」
「……」
そこで、最初の問いに繋がるワケね…。
いつになく長々と台詞を述べた玲於奈は、俺の目の前にどーんと現れる。
その長身で、椅子に座っている俺を見下ろすカタチとなっていた。



