「いや、わからなくもないんですよ。孤児だった剣軌くんにとって、優さんは自分の進むべき道を照らしてくれた恩人であり、尊い師匠であり、親以上の存在です。そんな優さんがあんな目に遭わされて、冷静になれず黙っていられないのもわかります」
冷静に淡々と語る綾小路さんは、そこで「しかしですよ?」と、念を押すように強調する。
「命を取らずに生きて罪を償わせる方法があるのに、恨みつらみで敢えて命を取るというのは、どうなんでしょうか…?」
「それは…」
「それは連中と同じく、自分のエゴに基づいた、ただの『殺し』です」
『殺し』のワードを耳にして、背筋がゾッとした。
そこで、なずなと菩提さん、二人の顔が浮かんでくると、なお切なくなる。
「もし、思うがままに復讐を終えたところで、残る物は何でしょう?……復讐の後に残されるものとは『空虚感』ではないですか?それに、それを達成したところで優さんが元気に戻ってくるわけではありません」
「……」
…そうだ。
彼が魔力を手放すか、もしくは死すること。
それが、この呪いからおじさんを解放できる術だと聞いた。



