ヤツはちょっと困ってるようだ。頭の奥底の記憶を掘り返しているに違いない。
困って悩んでるその様子を見守るのも……楽しい。
「ほらほら。何か言うこと。無いのか?」
「あ、あの……ま、待て!」
そう言いながら、横目でこっちの表情を伺っているようだ。
「えーと……」
「ほら、何だ?」
「……ただいま。……かな?」
かな?って。正解も不正解もないんだっつーの。何でお伺いたてるんだよ。
そう思ったら、思わずプッと失笑してしまった。
……君が、ここにいる。
「……おかえり」
何にも代え難い、その有り難さに嬉しくなってしまって、自然と笑みが溢れた。
嬉しくて、思わず両腕を広げる。
「ばっ!ばか!こんなところで」
「え?何?俺に会えて嬉しくなかったわけ?」
「……嬉しいってっ」
ボソッと言葉を残し、腕の中に飛び込んでくる。空港のあの時のように。
飛び込んできた体を捕まえるように、離さないようにギュッと抱き締めた。
再び、温かいぬくもりが、胸に。
戻ってきた……。



