「……おい、おまえ」
『……へっ?!』
電話の向こうのなずなから、ビックリした声が聞こえる。
無理もない。今の俺の声、相当座ってるのだろう。
今、ちょっと頭にきてる。
不器用ななずなにも、鈍感な俺にも。
「……おまえ、今。言ったな……?」
『へっ?な、何をっ……』
「……俺に。俺に会いたいと言ったな?……そうだよな?」
『はっ?な、何だよ!……いや、そうだけど』
俺が凄んだからか、なずなの涙は一旦止まったようだ。代わりにあわあわとして声が高くなってるけど。
「フライトは何時……」
『えっ……』
「フィリピンへの!フライト、何時!」
『え、あ……15:30だけど』
「じゃあ、余裕」
『へ?』
不器用なずなにも、不甲斐ない俺自身にもブチギレた俺。
これから、勢いでとんでもないことを宣言する。
普段キレないヤツがキレると……こうだ。
「おまえが俺に会いたいっていうなら。今から会いに行ってやる……!」
『……』
しーんと、静寂が訪れた。
『……は?声低くして、今から何を脅迫してくるのかと思いきや。今から私に会いに来る?……頭、壊れたか!』



