なずなが母親との再会をこんなにも不安に思ってるなんて、何で想像しなかった?!
そりゃ、そうだろう。離れている娘に一度も会いに行かずに、他に男を連れて出て行った母親を。
母親はなずなを連れて行きたかったのかもしれないけど……結果、なずなを置いて出て行ったんだ。
なずなが母親の思いを知るわけがない。直接会って、直接別れを告げたわけではないのだから。
そして、そんな母親との再会への不安に押し潰されそうになって……それで、今。
溜まってたまらず、俺に電話をかけてきた。
(……)
俺の不安は、杞憂だった。
杞憂どころか、ただの気持ち悪いネガティブ妄想だった。
……ではない。
《だ、だからっ、伶士の声っ、聞きたくてっ……》
……こんなにも必要とされていて、俺はいったい何をやっていたんだ。
くだらん妄想でしょぼーんとしていて。
《あいたくてっ……》
……ああぁぁっ!もう!
何でこいつ、こんなに不器用なんだよ!
俺の声を聞くこと、会いたいって思うこと、我慢する必要、あるか?!
そんな些細なことで崩れ落ちそうになるプライドなど……捨ててしまえ!
……俺の前では。



