意地っ張りの見栄っ張りの負けず嫌いは、ボディガード、陰陽師であることの矜持からくるもので。
それを取っ払ってしまえば、なずなはただの16歳の女子高生。
父親をも亡くして、喪失感に押し潰されそうになっている、一人の女性なのだ。
受話口から聞こえてくるすすり泣きを耳にして、また俺は後悔する。
俺はいったい、何を考えていたんだ。
なずなの何を見ていたのだ、と。
そして、次に続くなずなの思いを聞いて、更に後悔するのだった。
『れ、伶士っ、わ、私っ……』
「……うん、何」
『わ、私っ、ホントは、ママに会うの、怖いっ……』
「……え?」
『ず、ずっとっ、会ってなかったっ……ママ、一度も会いに来てくれなかったのにっ……ど、どんな顔して会えばいいのっ……』
「……」
『……も、もう、どうしていいかっ、わかんなくてっ……だ、だからっ、伶士の声っ、聞きたくてっ、あいたくてっ……』
……熱く打ち付ける鼓動が、胸が痛い。
なずなが、母親に会いたいって?
喜んで一緒に住むかも?日本に帰ってこないかも?
俺は……なんて勝手なことを考えていたんだ!



