「お、おまえ!今どこにいるんだ、何してる?!元気にしてるのか?!」
あれだけ待ち侘びていただけあって、次々と言葉が飛び出してくる。一気に質問責め。
……だが、当のなずなは質問には答えず無言だった。
人の足音や物音だけが、電話の向こうから聞こえる。
『……』
「……おい!聞こえてるか?……もしもし!」
『……』
「……返事ぐらいしろなずなぁぁ!」
『……今日、これからフィリピンに行ってくる』
「なっ……」
……そうか、これからなのか。
ヤツが、フィリピンへ旅立つのは。
「親父の遺言で、ママに会ってくる……」
「そ、そうか……」
とうとう、行ってしまうのか。
そう思うと、俺の変な勢いも衰えていた。
「ぱ、パスポート、大丈夫かよ……」
『……うん、作った』
「じ、じゃあ……今後トーマスのところに行けるな……」
『だから、トーマスって誰……』
「だから、現地の人」
『……』
「……おい」
『……』
せっかく電話くれたのに、無言が多い。
らしくなくて、なんかモヤモヤする。



