それは……。
(……あれ)
……確かに。ぽめの言う通り。
なずなの口から直接そう聞いたわけじゃない。
なずなのこの過去話も、ざっくりと聞いたものだし。
なずながそう思ってるに違いないというか……『普通なら恐らくそう思うであろう』という、大多数一般論からくる俺の勝手な憶測なわけであって。
(……)
犬に正論を突きつけられて、何も言えないでいた。
ようするに、ぽめは『俺がなずなの感情を妥当だとか一般論で勝手に決めつけて、勝手に落ち込んでいる』と言いたいのだろう。
だから、一方通行か。
だが、その犬は次なる言葉を畳み掛けてくる。
ふたりはおもいあってんだろ?
れいしどのは、なずなとはなれたくない。
それなら、なずなだっておなじことをおもってるかもしれないだろ?
なずながほんとうはどうおもってるか、ホントのこときかないうちから、おちこんだらダメだぞー。
……わかってる、それは。ちっ。
なずながひょっとしたら、フィリピンに行ったまま帰ってこなくなるかもしれないなんて、単なる俺の不安だ。
こんな風にネガティブに考えるなんて、俺の弱さなのかもしれない。



