ーー想像出来ずに、また、時が経つ。
気付けば、もう六月も半ば。なずなが我が家を出てから、半月も経ってしまった。
降り注ぐ日差しの暑さも増し、空の表情も空気の匂いも夏へと変わってきている。
そんな夏の朝の空を、教室前の廊下の窓からボーッと見上げていた。
平穏を噛み締めるように。
平和っていいな。なんて。
「おー。伶士、おつかれー」
朝っぱらからおつかれか。おはようじゃないのか、やれやれ。
なんて思いながらも振り向くと、声の主は手を振りながらゆっくりとこっちにやってくる。
リュックを背負ったままの、登校したてのなずなが。
「おはよう」
「おはよ。……昨日はおつかれ。試合、惜しかったなー。準優勝?」
「うん。でもインターハイ行けるし」
「あ、そうなんだ」
へぇー。なんて、感心する声をあげながら、なずなは教室には入らず、リュックを背負ったまま俺の隣にやってくる。
二人並んで同じ方向、窓の外にある青空を見上げるカタチとなっていた。
「天気いいなー」
「うん」
「夏、だな」
「……うん」



