「これじゃあ、士朗ちゃんという婚約者がどこぞの馬の骨に現を抜かして泣いていた美織を、優が慰めるためにウチの店に連れてきたあの時を思い出すねぇ」
「……こら!昔の話だぞ!しかも息子の前で!」
「……だから、そんな話をしようじゃないか」
パパ太夫はまた、フッと笑う。
「優がいた、笑っていたあの時のことを思い出して皆んなで話そう。笑おう。……でも、失って悲しいもんは悲しいんだ。だから、我慢せずにみんなで泣こう。優がいなくなって寂しいって素直に泣こう。……前を向くために、さ」
「乱さんっ、行くっ、行きますっ」
「美織、この社長夫人!このクソ美人が!……20年前、優がアンタを店に連れてきた時、ショックでアタシの心臓が三秒停まった時の話、してやるわぁぁ!」
すると突然、パパ太夫のバックいたニューハーフのおっさんが吠えながら、母さんの手を引っぱる。
母さんはあっという間にニューハーフ軍団に連れて行かれてしまった。あわわ。大丈夫か。
だが、先に進み出した軍団の後を、木嶋さん、神威さんや川越さん、星砂さんがニヤニヤしながら楽しそうに着いていく。



