「……士朗ちゃん、柊斗、美織。行くよ?」
「え、乱さん?」
「今日はもう店を閉める。……貸し切りにするから、私達と一緒に飲まないかい?」
「え……」
突然のお誘いに、母さんは目を丸くしていた。振り向いて、親父と柊斗さんの顔を伺っている。
パパ太夫は、目を伏せてフッと笑っていた。
「……今晩は、どうも一人じゃいられそうにない。だから、心の友を失って悲しんでいる者同士、今晩は飲み明かそう」
パパ太夫の後ろに集まった人達は、賛同するように頷いている。
みんな……同じ思いのようだ。
「……」
「逝ってしまった優の話をいっぱいしようじゃないか。今までの思い出話、たくさんあるだろう?……みんなで優の死を悲しもうじゃないか」
「……乱さんっ」
途端に母さんは駆け出す。
その横顔は歪んでいて、涙が光っていた。
正面にいたパパ太夫に抱き着くなり、「うっ…ううっ……」と、嗚咽する声を漏らしている。
母さん、それ、オッサンだよ?!
「おやおや、美織。泣き虫で儚いのは母親になっても変わらないねぇ?」
そう言ってパパ太夫は、泣く子をあやすかのように、母さんの背中をトントンとゆっくり叩いていた。



