flowerの店員らにやんややんやと突っ込まれて、菩提さんは流すように軽く笑っている。
かしこまった挨拶も、ニューハーフの手にかかればこんなもんか。
しかし、この面子の勢いに戸惑うことなく「あはは」だけで軽く流せるなんて、やはり菩提さんは遣り手なのだ。
俺なんてもみくちゃにされて、ズタボロに……。
そんなニューハーフの魔の手を簡単に逃れて、菩提さんは大勢のお見送りに向けて、改めて頭を下げる。
「それでは、行って参ります」
菩提さんの挨拶を黙って聞いていたお見送りの人達は、静かに頭を下げ返す。
「戻って来たら一杯やるよ!」「一緒に強く生きるよ!」と、やんややんやうるさいのはニューハーフ軍団だけだった。
「いい加減やかましわ!」と、パパ太夫に後ろからケリを入れられている。
俺は……ただ、なずなだけを見守っていた。
菩提さんの傍で、俯き加減のヤツを。
下を向いたヤツの表情は、不安げで頼りない。悲しみが心を占めているんだ。それは当たり前だ。
(大丈夫だ……)
そう念じるように、なずなをじっと見つめる。



