そう呟いた後、細い肩、頭や体が震え、俯いて嗚咽する声が微かに漏れていた。
……手を握るだけじゃ、足りなくて。
思わずその手を伸ばして、肩を引き寄せてしまう。
「伶士っ……」
両腕の中に収まったなずなは、俺の胸に顔を埋める。
嗚咽して震える体と、弱々しい声が振動となって胸に伝わってきた。
「わかってる、わかってるよっ……これでよかったんだ……親父を呪いから解放したんだっ……」
「……うん」
「でもっ、でも、寂しいっ……もう、親父に会えないっ……」
どんな言葉を掛けたらいいのか迷ってしまって、ただ相槌を打つことしか出来なかった。
実の父親が亡くなったんだ。悲しいのは当たり前。
どんな慰めも、今はただの戯言になってしまう。
ただ抱き止めて、思いをただ聞いて、受け止めてやるしかないと思った。
「寂しい……」
……ただ、安堵していることがある。
こいつ、おじさんの命が尽きるその瞬間、涙を流さなかった。
実の父親を失ったなずなが一番辛いはずなのに。大人どもが散々泣いていたからな。
だから、失った悲しみをこうして吐き出すことが出来て……良かった。



