「……優。アタシゃ行くよ。申し訳ないが、おまえの逝くその瞬間を黙って見守る自信がない」
そう告げられたおじさんは、ベッドに横たわったまま、絞り出したような細く弱った声で返答する。
「乱ちゃん……」
「だけど、『終わるその時まで、傍に居て欲しい』。……あんたの望みは叶えたい。だから、少し離れたところだけどあんたの傍にいる。あんたが逝く、その時まで」
「……うん、ありがと」
「まさか『これから死にます』なんて、目を開けてくれるとは思わなかった。最高で最大の奇跡だよ、優。あんたらしい」
「うん……」
「アタシはあんたのこと一生忘れない。死ぬまで忘れないよ?お互い道は違うけど、この夜の世界を切磋琢磨で木嶋らと共に駆け上がった日々のことも。……いつまでも忘れない。あんたがいつまでも見守ってくれてるって、ここの霞んだ空を見上げて都合良く勝手にあんたを思うよ」
パパ太夫の言葉に同意するように、傍にいる二人も頷いていた。
木嶋さんは、へっと鼻で笑っている。
「優、死んでもエロ本読めよ!」
と、同時に、パパ太夫のビンタが木嶋さんの頬に炸裂した。
それを見て、おじさんは力無く「あはは」と笑っている。



