「ああっ……なんてこと」
おじさんが目を覚ましているその姿を目にして、母さんは感動のあまり、手で顔を覆ってゆっくりと息を吐いている。肩は震えていた。
まさかの展開に驚きのあまり、胸がいっぱいとなったようだ。
するとそこで、ガタッと足音がする。
「役者は揃ったね?……そしたら、後は近しい者らだけで過ごすんだよ」
そう言って、病室を出ようとしたのは、パパ太夫らだった。
隣にいた木嶋さんも、様子を見に顔を出した綾小路さんもパパ太夫に同意するように頷いている。
「近しい者って……乱さんや木嶋さんだって。綾小路くんも」
柊斗さんが引き止めるが、パパ太夫は首を横に振る。
「なぁーに。家族ぐるみの付き合いに水を差すほど、アタシゃ図々しくないよ」
「それに、みんな屋上にいるってさ」
木嶋さんの一言に、綾小路さんは頷いている。
みんな……?
って、さっき訪問してきた人達?帰らずに、この病院の屋上にいるのか?何で?
すると、パパ太夫が一歩戻って、おじさんに声を掛ける。
……今生の別れともいえる、一言を。



