何故、彼女が死ななければならないんだ。
《何も無くなった世界で、二人で過ごしたい。ただ、二人で肩を寄せて》
俺たちの描いた未来の向こうに、君がいないなんて……どうすればいいんだ?
絶望で頭が真っ白になったのは、言うまでもない。
道標を失い、彷徨う子羊のようだ。
彼女がいないこの世界、生きている意味がないから、俺も後を追うことも考えた。
……だが、出来なかった。
自らの命を断てるほど、俺は勇敢ではなかったらしい。
自分に向けた拳が震えて動かなかった。
だが、彼女が死んだだけでは俺たちの目論みは止まらない。半人半魔は俺と彼女だけではないのだ。
もう、後に引き返せないところまで来ていた。
陰陽師、神童らと同胞が戦うその戦火の渦を冷めた目で見下ろす。
……くだらない。
彼女もいないまま、同胞と心中してやる義理はない。
開きかけた紫の門を巡る中、俺は一人、その開いた門を使って敢えての離脱を試みようとした。
その時だった。
『リグ・ヴェーダ……殺してやる!親父をあんな目に合わせて!』



