まるで、この結果に満足したような。
目的が、願いが果たされて何も思い残すことがないと言っているような。
「こいつ……こんな風に笑えるんだな」
剣軌の一言が胸に刺さる。
私らは今まで、ただ憎悪の感情だけでリグ・ヴェーダを見ていたのだけど。
こいつにはこいつなりの事情があったのかもしれない。深い、心の闇が。
けど……こうして命を落としては、もう知る由もないのだ。
(親父は……)
……親父は、わかっていたんだろうか。
だから、説得交渉に臨んだのだろうか。
これも、知る由が……。
……あっ。
「つ、剣軌!こうしちゃいられないって!は、早く親父のところに!」
一悶着あって忘れかけていた。
親父の身に何か異変が起きている。早く親父のところに行かねばならない。
ひょっとしたら……奇跡が。
「わかっている。行くぞ」
お互い目を合わせると、頷き合う。
「コイツの躯はここに置いておこう。運転しながら拓狼さんら警察に連絡しておく」
剣軌がその一言を私に告げた時。
この廃墟の正面ドアがバタン!と開いた。
「ほ、ホントにいまシタ……」



