……私、こいつのこと恨んでいたんだよね。復讐しようとしていたんだよね。
でも、そうじゃないと思い留まった。剣軌も納得した。
けど、結局はこいつは死んで。
助けられなくて。
……私は一体、何をやっていたんだろうか。
何が正しかったのか、わからなくなってきた。
肩を落として、今までの行動を思い返す。
半ば悔いていた……その時。
「見ろよ。コイツ、笑ってる」
「……は?」
いつの間にか私より前に出て、横たわるリグ・ヴェーダの顔を覗き込んでいた剣軌が声をあげた。
いつもの感情を見せない淡々とした表情なのに、少しばかりか苦笑いしていると思ったのは気のせいか。
急に何を言い出すんだ。と思いながらも、兄弟子の言う通りに赴いて、生命の営みを停めたヤツの顔を見る。
……だが、その顔貌に驚いてしまったのは言うまでもない。
「……」
笑ってる……。
いつもの不気味な微笑みではない。
目尻が下がり口角は緩やかに上がっていて。
憑き物が取れたかのように、安らかで心地良さそうで。
人間らしい、心からの笑顔だった。



