儀式という神聖なイベントの途中にも関わらず、ふと生じた疑問が口から出てしまう。
親父の契約していたガーディアンは【大樹緊那羅】という二十代半ばの青年、天界の天竜八部衆の一人、緊那羅王の令息だったはず。
神聖な儀式の最中に質問など怒られると思ったが、目の前の彼女は普通に答えてくれた。
《大樹お兄様は、今回の優の件で心痛めちゃって引退するんだって。だから、妹の私が貴女の守護神になるの。……だから、名前は?名前、教えてよ。早く、もうー》
そして、目の前の人影の少女……緊那羅王の令嬢は、再度私を急かしてきた。少々せっかちらしい。
……しかし、状況把握した以上、もう迷う事はない。
重くなっていた口をようやく開く。
「……音宮、なずな」
この、継承の儀で一番最初にやることは、神童になる私と、ガーディアン。互いの『名前』の認識だ。
ガーディアンの駆使する神術の原動力は、主に『言霊』。
口から発した声、言葉。それらに神力が交わり、初めて神術を発動することが出来る。
そして、『言霊』の力が最も強く宿るのは、自分の生を持って付けられた『名前』だ。



