(……)
まずは、そっちから名乗れ。
……と、言いたいところだが。
まさかの推測通りだと、私から名乗るのが筋なのである。
これは……儀式なのだから。
事の状況を断定することが出来ず、口を結んだままでいた。
だが、事が進まない状況に、相手の女性が急かしてくるようだ。
《ちょっとぉー。先代が次代への継承を了解したから、貴女のところにやってきたのにぃー》
私が固まったままでいることに苛ついたのか、相手は随分と砕けた話し方になった。
だが、今の会話。そこが問題ではない。
……え?先代が継承を了解した?
「ま、待って!先代が継承を了解したって!お、親父は……!」
相手のこの一言で、いくつもの謎が明かされる。
やはり、これは我が一族の神童、当主継承の儀。
そして、こんな場面でこんな急にこの儀式が執り行われているなんて。ちょっと意味わかんないんだけど。
もしかして。
「親父の意識が戻ってるのか……?」
すると、目の前の人影は首を傾げる。
《……そこの事情はよくわからないんだけど。でも、今の【緊那羅】の神童が、次代へ継承するって言ってんだから。だから私、貴女のところに来たのよ》



