……このままでは、剣軌は完全に魔族と化し、目の前の仇を無惨にも殺してしまう。
そして、魔族となった剣軌は……殲滅対象となり、私たちの手で滅殺しなくてはならなくなる。
(い、いや、ま、待て……)
そんなこと、私に出来るわけがない。剣軌は兄弟子であり……家族。
でも、私がやらなくても、別の誰かがやる。総本山から派遣された別の陰陽師、もしくは他派の術師や……あるいは神童が、魔族となった剣軌を処分しに来るのであろう。
剣軌が、居なくなる。もう、この世界の何処にも。
私の前から、また。
家族が一人、いなくなる……。
(ま、待って……)
ママも国へ帰り、親父も目が覚めることはもうない。
そして、剣軌までも……。
みんな、みんな私の前から居なくなっていく。
私は、とうとう一人だ。
(……)
目の前の光景を茫然と見守る中、頭の中には今までの思い出が動画の早送りのように駆け巡る。
親父とママと剣軌、四人で過ごした幼き日々のこと。
《なずな、love you》
《dad!me,too!》



