人間の肌質、形からどんどん変化していくその様を見守っては、私の中に恐怖が拵えていく。
剣軌の細い腕が、バキバキと音を鳴らして黒い鱗をあしらった、一回り大きな筋肉質な腕へと変わる。
剣軌が、私の家族が……魔族に、なってしまう……。
「……さあ、この『黒魔竜』の腕で、どうされたい?腑を引き摺り出すか?心臓を握り潰すか?それとも、五体をバラバラに引きちぎってやろうか?」
「へぇ……面白いじゃないか」
魔族化していく剣軌を目の前に、リグ・ヴェーダの表情にも少しばかりか狼狽している雰囲気を感じる。
私同様、恐怖を感じているはずなのに、ヤツはその恐怖心を押し込んで、ニヤリと不気味な笑みを見せた。
何故笑うのかわからない。何で喜んでるんだ?!
互いが好戦的となり、今にも戦闘開始しそうな空気になっていたが。
(あ……ああっ……)
二人から少し離れたところにいる、蚊帳の外の私は、恐怖と絶望でただ狼狽えるしか出来なかった。
こうなってしまったこの後のことを考えると、愕然と肩を落とすしかなかったのである。



