(嘘だろ……)
剣軌が侍らせていた風神の風は、得体の知れない濃い魔力と引き換えに消え去っていた。恐らく風神召喚の呪を解いたのだろう。
「……優さんらが何故おまえらをすぐに抹消しなかったか、わかるか?」
「……」
剣軌の淡々とした低い声が耳に入ってくる。反射でブルッとしてしまったのは、私の悲しい性だ。
リグ・ヴェーダからの返答は、ない。
「……それは、おまえらが半分魔族でも結局は人間だからだ」
「へぇ……」
半分魔族でも、半分人間……。
……私も今なら痛いほどわかる。親父がすぐにこいつらを消そうとせず、手を差し伸べた行動の意味が。
親父は……人間が好きなのだ。
ましてや、マントラの構成要員の殆どが若者。若者特有の一時の思い込みだけで『人間』であることを捨てて欲しくなかったのだと思う。
今見えてる世界は汚くて辛いかもしれない。
でも、美しい世界も見ることが出来るんだ、と。
だから、半人半魔契約を解除するように、和羅さんと二人で説得をした。