そして、返答に困って固まった私を構わず、ヤツは一人で喋り続ける。
まるで、舞台の主役のように。
「……散々、人をも殺して悪いことしまくっているにも関わらず、そんな僕らに憐れみの目を向けた人がいる」
そんなセリフを吐くヤツだが、語気が強まる。
ひん剥いて血走ったイッちゃってる目つきの、その奥底には『怒り』が込められているような気がした。
不気味だ。不気味過ぎる。警戒を強めてヤツの行動を見守った。
だが、その背筋がザワザワする声で、私達の大切な人の名前をヤツは口にした。
「音宮優……君らのお父さんさ?」
心臓がぐるんと震える。
殺気がはみ出したかのように。
「……おまえがその名前を口にするなあぁぁっ!」
私が怒るよりも先に、憤慨して怒鳴り散らしたのは剣軌だった。
ヤツの口から出たセリフを掻き消すかのように。
だが、それでもヤツは笑い続ける。
「あはははっ。何怒ってんの?こっちだって、怒りたいんだよ?……何で、そんな手を差し伸べられなきゃならないの」
「おまえ……」
「……全然可哀想じゃないんだよ!こっちは!」



