小さなステージの奥で、パイプ椅子に腰掛けている。
周りには、ゴミや廃材だけではなく……自身の黒い羽根も共に散らかっていた。
椅子に腰掛け、片膝を抱えている。ヤツの代名詞である身長をも超える二つの黒い翼は出したまま、その身を抱えて護るように。
まるで、夜眠りにつく烏のよう。
リグ・ヴェーダ。
その姿を視界に入れると、腹の底から怒りが沸き上がる。
……だが、剣軌も同じ心情だったらしい。
「何もかもが中途半端過ぎて腹立たしい」
憎しみが込められた、棘のある発言を投げかけた。
しかし、それを笑い飛ばしてしまうのだから、なお勘に触る。
「あはははっ!完璧を求められてもねぇ?」
完全に、おちょくられているのだ。
「それで、何?……僕を殺しに来たの?」
「そうだ。それ以外におまえに用事あるか」
「いいねぇ……その瞳。憎しみたっぷりでさぁ?!」
淡々としている剣軌とは打って変わって、ヤツは気分が高揚してきたのか、声が張り上がって大きくなった。
アホじゃねえのか。殺すと言われてご機嫌になってるとか。
ビビらないから、こっちは更に苛立たせられる。



