「じゃあ、開けるよ」
そう言って、剣軌は目の前の扉を開ける。
そこは正面出入り口。真っ正面から堂々と乗り込んでしまった。
開けるとキィィ……と音が鳴り、扉の年季を感じさせる。
中は薄暗い。前にいる剣軌の輪郭がなんとかわかるほど。
一歩踏み込むと、ギシッと床から音が鳴る。
埃も巻き上がる。放置された年のぶん、積み重なっているようだ。
「……あれぇぇ?……居場所、わかっちゃったの?」
背筋がゾクッとした。
高めのその男の声は、同時に苛立ちをも覚えさせる。
「これで隠れていたつもりか?笑わせてくれる」
低くドスの効かせた声を発する剣軌は、いつのまにか壁際に移動していた。
そして、遮光のカーテンをシャッと開けると、小窓から陽が差し込む。
照明のように室内が日差しで照らされる。光と共に、室内の全容も見えてきた。荒れ果ててはいるが、造りはステージもあるこじんまりとしたライブハウスだ。
すると……ヤツの姿もはっきりと見えてきた。
「隠れていたつもりではあるけど、バレたらそれはそれでいいかなとも思って?」



