……剣軌は、網走だか紋別だかに在住していたヤンキーの若気の至りで出来た子供だったらしい。
生まれたと同時に施設に預けられ、まさに天涯孤独で生きていた。
しかし、その施設というのが悪い魔術師に手引きされて悪い事をしていたのだ。
施設の子供を魔族に献上し、魔術師からお金を貰うという……。
その問題解決のため、依頼を受けた親父が施設に派遣され、親父と剣軌はそこで出会う。剣軌が八歳の時だった。
『俺も陰陽師になりたい』
そう言って、強引に親父に着いてきた小学二年生の剣軌。
そうして、なんやかんやと親父とママのいる家に居候することになる。私はママのお腹の中にいる時だった。
なので、剣軌は私が生まれた時から、我が家の住人、血が繋がっていないとはいえども家族だった。
我が子を家に置いて、夜中ほっつき歩く両親の代わりに、幼い私にごはんを食べさせたり、寝かしつけたり、世話してくれたのは、剣軌。
主に英語で生活していた私に日本語を教えてくれたのは、剣軌。
危険にも関わらず、小さな私を抱いて親父の現場を見学させてくれたのも、剣軌。
剣軌は、私の兄も同然の存在だ。



