まさか伶士が『憎っくきあの男の首を獲って来い!』という心情ではないだろう。
あんな甘ちゃんの優しい男だ。憎かろうが人を殺めるなど推奨するタチではない。
『やめろ』と言いたいところを、グッと堪えて好きにすればいい、信じてると私に告げたのだ。
……もし、私がお望み通りにあのヤローの首を獲り、復讐を果たしたところで。
私は翌日、昨日とは変わらず、何食わぬ顔で伶士の隣にいられるのだろうか?
そもそも、あのヤローを殺さなくとも、【相殺】で魔力を奪えば、親父は呪いから解放されるんだぞ?
みんなの言う通り、最低限の目的は果たせるんだ。
それに、殺すにしても【相殺】にしても、呪いから解放された親父は、どのみち死ぬ。
今の容態では、意識も戻らずにそのまま心臓が停まるだろうとのことだ。
二度と……目を開けることはない。
けれど……親父や私らの受けた三年間の苦痛は、その程度では収まらないのも事実。
剣軌の言い分も、わからないわけではない。
殺すまでしなくともよい。
しかし、そんな程度じゃ納得がいかない。
でも、復讐を果たした後、伶士の隣にいられるのか。
私の中で、葛藤が生じる。



