最初はただのボディガードのはずだったのに。
いつからだろう、歯車が回るように目の前に見える世界が変わり出したのは。
おまえだけを想うようになったのは。
胸に込み上げてくるものは満ちて、まさに破裂寸前で、弾けないよう抑えるため、息を整えるのに必死だった。
水漏れのように染み出して、表に出そうだ。
腕を組んでランウェイを歩く二人、蓑島さんは観客の生徒らに手を振って愛想を振り撒いている。
女子の「キャー!」という歓声、半端ない。さすがみんなのミスター。
一方、なずなは緊張なのか何なのか、引き攣り笑いなんだけど。愛想を振り撒けないのか?下手くそ。
だが、隅に不安が落とし込まれた表情でもある。
……ひょっとして、最後の最後まで俺にこのステージの詳細を伝えてない後ろめたさだろうか。ぷっ。
花嫁のくせに、そんな不安な顔するなよ。
すると、五島さんがトントンと背中を叩いて合図をしてくる。
「ひょっとして見惚れてる?……さあ、そろそろよ?ホントの花婿さん?」



