羨望なのか、よからぬ妄想、もしくは彼なりの考察が繰り広げられているのか、その思考回路は理解しがたい。

まあ、天才と呼ばれる者の思考はいつだって理解しがたいものだ。

そこに頭を悩ますことはしないが、うっとりと自分の世界に入られては話にならない。



「あの『核』は黒曜石。…あの『色鬼』の黒曜鬼のものであることを、我々は一目でわかりました。でも…どうして黒曜鬼の『核』だけが残っているその理由がわからないから、こうして相談に来てるんじゃないですか。…弓削先生」

「そーだよね、ごめんねぇ」



へらっと笑って誤魔化されたような気がする。

だが、欲しい答えをすぐに明らかにしてくれるから、この天才と言われた有能な魔術師・弓削劉人のことは嫌いじゃない。



「僕の考察としては……やはり魔族の嫌いな【聖域】の力だと思うけどね?」

「……」

やはり…と、推測は確信へと変わった。



「この世界で【聖域】を扱えるのは夢見の【夢殿】さんだけだと思うけど?…ひょっとして、覚醒しちゃったのかなぁ」



その機能を失った『核』を、彼が手に持っていた。状況からいっても、そう考えるのが妥当である。

しかし、これはそこら辺で拾ったとか知りませんとか言い張って、隠そうとしているのかが気になるけど。