「ーー悪かった。
初めて逢いに来てくれたあの日。
邪険に扱って。
どんな気持ちで逢いに来てくれたか、気づけなくてーー。


だから待つばかりが嫌だった。

だから逢いに来たーーーー」





暗がりの海を照らすのは、
たった1つの月灯りだけーー。

水面に反射して、
キラキラと光、時々歪んだ月が真上にあった。


本物の月は、歪んでなんか居ない。


「ーー君はずっと俺に笑顔をくれたありがとう。

俺に逢いに来てくれてーー。
救われたんだ」





23時59分。





あー、もう時間が無い。





「ーー好きだよ。
ずっと一緒に居たい」









カチ。








0時。
頭の中で、音がしてーー目の前に居た君が消えた。




きっとーーまた朝になって、目覚めた最初からやり直すんだ。





朝いつも起きるあの場所でーー。

普段と変わらない日常を

それが"現実"ーーーー。



ギュ。








それは、唐突に訪れた。








「ーー花」






君の温もりが確かにあって、
その暖かさに、泣きそうになるのを保った。



夜。


時刻は0時5分。


変わらない満月。


変わらない日常。



朝じゃないーー夜だ。



変わらない満月。