しかし、そんなことは起こらずにどうにか狭い隙間に自分の身を隠すことに成功した。


そこでジッと身を潜めていると、何匹もの猫たちが先生にとらわれるのを目撃した。


兄も姉も、そして妹も弟も。


みんな先生に捕まってしまった。


人間がその場からいなくなっても猫田さんはそこから出てくることができなかった。


人間はまだどこかに潜んでいて、自分が出てくるところを狙っているのではないかと思った。


やがて周囲は静かになり、太陽は傾いてオレンジ色になり始めた。


猫田さんの体の震えはおさまっていて、そっと隙間から這い出した。


そしていつも家族で使っている体育館裏へと足を進める。


しかし、そこには誰もいなかった。


兄弟も母親も父親も。


他の猫たちの姿も消えてしまって、猫田さんはひとりで立ち尽くしてしまった。


「なんだ、お前も逃げ延びたのか」


そんな声が聞こえてきて振り向くと、この一体を閉めているオス猫がいた。


体が大きくて貫禄のあるその姿に猫田さんは一瞬身を縮める。


しかし、相手は攻撃してくる気配は見せなかった。


「ここはもうダメだ。お前も早く別の家を探すんだな」


オス猫は猫田さんにそう言い残すと、さっさと学校から出て行ってしまった。