転生という言葉に怜美は目を丸くした。


転生と言えば流行の物語でしか聞いたことのない言葉で、現実にも魂が転生していくものなのだと初めて知った。


ただ、転生先は異世界ではなく、現実だということだ。


「そうなんですね。じゃあその人がどこか近くにいるかもしれないってことじゃないですか!」


猫田さんはうなづく。


ただ、転生してしまえば前世の記憶や、かくりよ内での記憶は全部消えてしまうらしい。


それを残念に思いながらも、怜美は体育館裏へと足を進めた。


猫田さんは無言で怜美のあとをついてきている。


体育館裏へ到着すると何匹かの猫たちが警戒した様子を見せた。


しかしそれが怜美と猫田さんであるとわかると、すぐにその場で毛づくろいを始めてしまった。


「あれ、今日は威嚇されませんでしたね」


学校に住み着いている猫たちは、いつも怜美たちを威嚇してくるのに。


「今日は僕と怜美さんしかいないからだと思います」


猫田さんは毛づくろいを始める野良猫たちを見て、目を細めた。


その表情はとても柔らかく、周囲を見回している様子は何かを探しているようにも見えた。


怜美は猫田さんへ体を向きを変えた。


「猫田さん、猫田さんの心残りを教えてください」


力強い声色で、怜美はそう質問したのだった。