猫田さんがこっちにきてから怜美にはずっと気になっていることがあった。


それは猫田さんの名前だ。


猫田なんて苗字珍しいし、この辺の地区では聞いたことがないものだった。


「猫田さんは、元々猫だったんですか?」


地下室から出て廊下を歩きながら怜美は質問をした。


猫田さんは怜美について歩きながらうなづく。


「そうです。長くこの学校にいたため、猫又になってしまいました」


猫田さんは困ったような、少し恥ずかしがるような表情になって、頭をかいた。


猫又というのは怜美も聞いたことがあった。


長く生きてきた猫が妖怪になったときの名称だ。


「やっぱり、そうなんですね」


この学校には沢山の野良猫たちが住み着いている。


猫田さんが何年前までここにいたのかわからないが、猫たちが住み着き始めたのにも長い歴史がありそうだ。


「どうして、かくりよの世界に行ってしまったんですか?」


「猫又になってこのあたりを彷徨っていたときに、あの扉が開いて当時の責任者が出てきたんです。それで、妖怪になってしまった僕を見て『いつまでもこっちの世界にいるわけにはいかないんだよ』と諭してくれた」


猫田さんは当時のことを思い出すように目を細めた。


「当時かくりよの責任者をしていた人って、今はどうしているんですか?」


かくりよの今の責任者は猫田さんだ。


「転生して新しい人生を歩んでいます」