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飯田校長の笑い声が消えていくと、途端に周囲に静けさが立ち込めた。


猫田さんはぼんやりとドアを見つめている。


「これで、全員がかくりよの世界に戻りました」


そう言い、怜美へ向き直る。


怜美は少しだけ嫌な予感がして猫田さんを見つめた。


「怜美さんが手伝ってくれたおかげです。ありがとうございます」


猫田さんは丁寧に頭を下げる。


それはもうお別れが近づいていることを知らせていた。


怜美の胸に悲しさ、寂しさが押し寄せてくる。


猫田さんにもう会えなくなるなんて嫌だった。


怜美は自分でも気がつかないうちに、猫田さんの服の袖を掴んでいた。


「まだ、終わってないです」


「え?」


「猫田さんもかくりよの人ですよね? それなのにこっちの世界に出てきているということは、なにか原因があるはずです」


怜美はまくしたてるように言う。


猫田さんは驚いたように目を見開き、そして微笑んだ。