「間違いない。ここがあの子の家だ。20年も建っているから、違う人が暮らしているのかもしれない」


飯田校長がそう言ったときだった。


ガチャリと玄関の鍵が開く音が聞こえてきた。


怜美は歩道の脇へと身を寄せる。


中から出てきたのは30台前半くらいのキレイな女性だった。


スラリと背が高くてまるでモデルのよう。


思わず見とれていると、後ろから幼稚園くらいの女の子が出てきた。


母親の女性と同じ水色のワンピースを着ている。


更に奥から出てきたのは背の高い男性だった。


子供の手をしっかりと握り締めている。


「あれは……あの時の子だ!」


途端に飯田校長が声を上げた。


え、あの人が!?


20年も前のことだからとっくに大人になっていておかしくない。


苗字が違ったのは結婚していたからみたいだ。


「なんだ、そうか、ちゃんと恋愛して結婚して子供まで」


そこで飯田校長の言葉が途切れて、布の中から鼻をすする音が聞こえてきた。