「どうですか? 怖いでしょう?」


怜美は自分で話た噂にブルリと身震いをした。


この噂には2つの恐怖が隠されている。


1つ目は死んでからも子供を狙っている校長の執着した気持ち。


そして2つ目は身近な人でも信用してはいけないという恐怖だ。


しかし目の前にいる猫田さんは小首をかしげてしまった。


「え、怖くないですか?」


「怖い怖くない以前に、その噂はおそらく嘘です」


キッパリとそう言いきった猫田さんに怜美はムッとして頬を膨らませた。


この噂は怜美が入学したときにはすでにささやかれていたもので、長い歴史を持っている。

それを簡単に否定されたことが不愉快だった。


「どうしてそう思うんですか?」


「たとえ校長先生だったとしても、そんな犯罪者の絵画を飾っておくとは思えません。話の中ではその校長先生はちゃんと絵画として飾られている。つまり、犯罪は犯していないんじゃないでしょうか?」


冷静な意見を述べる猫田さんに怜美は黙り込んでしまった。


たしかにその通りかもしれない。


大きな問題を起こした校長の絵画なんて飾らない。


「じゃあ、どうしてあんな噂が立ったんでしょう……?」