学校の怪談

☆☆☆

浩一の話を聞き終えた怜美は鼻をすすり上げた。


なんて優しいお兄さんなんだろう。


こんな優しい人が死んでしまうなんて信じられない!


強い憤りと悲しみと悔しさが胸にあふれ出す。


「僕の心残りは、あの日弟たちの顔を見ずに死んでしまったこと」


「なるほど、そうだったんですね」


猫田さんはうなづき、ポケットからティッシュを取り出して怜美に渡した。


怜美はそれを受け取り、思いっきり鼻をかむ。


それでも涙はまだ止まらなくて、視界はすぐに滲んでしまった。


「鈴木くんはどうして……家にもどらなかったんですか?」


しゃくりあげつつ怜美は聞く。


二宮金次郎像が目撃されたのは学校内だけでだ。


せっかくかくりよから出られたのだから、家族に会いに行けばよかったのに。